日中広報シンポジウム総括

8月7日に愛・地球博ロータリー館において開催された日本広報学会創立10周年シンポジウム「広報が創る相互理解〜日中交流における対話と共創」は、中国からの聴講者を含め140名を超える参加を得、盛況裡に終了した。
参加者数だけでなく、講師選定やプログラムについても、現状を的確に捉え、充実した内容と好意的な評価をいただいている。
このシンポジウムは、日本広報学会の主催のもと、(財)経済広報センター・(社)日本パブリック リレーションズ協会の共催という、広報関係3団体が初めてスクラムを組んだ試みであった。
両団体およびご協賛いただいた各社・各校、ご後援ならびにご協力いただいた各位に厚く御礼申し上げたい。
東京を離れ、しかも入場に時間のかかる博覧会場という制約から参加を見合わされた会員もおられるが、グローバルな来場者を集め、近年は「地球的課題を解決するプラットフォーム」としての性格を強めつつある、国際博覧会会場での開催は意義深いことであった。

張富士夫会長の挨拶に始まったシンポジウムは、基調講演として中国側から鄭硯農中国国際公共関係副会長による、中国のPRの最新状況と未来への展望。日本サイドからは日中経済貿易センターの青木俊一郎理事長に日系企業中国ビジネスの現状と広報の重要性につき提言をいただいた。
午後に入って生産財消費財のPR事例を取り上げた。オムロンの皆川泰平中国本社長からは、現地で製造から販売までを行う生産財メーカーのPR戦略と活動。ウェーバーシャンドウィック北京の劉希平総経理は、P&Gのマーケティングのケースを含めつつ、中国でのPRビジネス最前線をレポートしていただいた。
これらの報告を受けたパネル討論では、中国国際放送のキャスターとして哈日族(日本ファン)を生み出した経験を持つ青樹明子さんの司会のもと、企業サイドの状況に詳しい日中投資促進機構の嶋原信治事務局長、エージェンシーの現場を知るプラップジャパンの杉田敏副社長、中国社会とメディアの変貌を見守り続ける渡辺浩平北海道大学助教授、中国生まれで日本企業を熟知する徐向東キャストコンサルティング社長により、中国の変化と日本企業の抱えるPRの課題を巡り話し合ってもらった。

それぞれの内容は個別の詳細報告に譲るが、中国におけるPR作業が驚異的な発展を遂げつつある中、脆弱な広報体制の下で有効な対策を取れぬままで取り残されようとしている、日本企業一般の姿が浮かび上がったように思う。
討議総括において、日本広報学会の上野征洋理事長が、日本企業が中国社会と顔を向け合う『対話』の必要性と、両者が中国社会の発展と消費生活の向上という目標を共有し、同じ方向に顔を向ける『共創』の重要性を指摘したが、日本企業の中国事業展開は明確な広報戦略を立て、体制を整備し、本格的な広報活動に取り組むべき時期である。
今回のシンポジウムで得られた知見が、国際広報研究の一助となるとともに、日本企業の国際広報実務に何らかの示唆を与えることを願う次第である