ブログの可能性

出版キャンペーン事例でマーケティングPRでの活用を考え、社長ブログに企業広報の変革の可能性を探り、参加型ジャーナリズム事例でメディア変貌の予感を見てきた。
これ以外にブログの発達が広報に与えるインパクトの可能性はいくつか指摘できる。
まず、企業ホームページでのブログの活用である。例えば、味の素は、ブログを利用したマーケティングサイト「マヤヤのお料理ABC 便利なお料理日記帳」を10月からオープンさせた。ホームページ更新が容易であることと、更新情報を発信できるというブログのメリットを活用した戦略だろう。
ブログで推奨して商品が売れれば一定のマージンを支払う「アフィリエイトプログラム」と呼ばれる方式が一般化し始め、月収30万円を超える専業主婦も現れた。流通段階への個人の参入は、これまでの企業のチャネル政策の見直しを迫ることになるかの知れない。エレクトリックコマース(EC)の発展は、必ずエレクトリックコミュニケーション(EC)の変革を伴うことを考えれば、広報へのインパクトは大きいものと考えるべきである。

これら全ての事例を通じ浮かび上がる共通点は、ブログがネット内でさまざまな情報のつながりと人のつながりを生み出し、緩やかなコミュニティを発生させる基本的性格を有していることである。
ここに生まれる情報の集積と人の集積は、企業広報にとってこれからの貴重なメディアに転化するだろう。
特に、口コミ(バイラルマーケティング)の手段としてのブログは大きな期待が持てる。
筆者は、インターネットは情報を増殖させる装置だと考えている。「2ちゃんねる」など掲示板とブログの違いは、いずれ稿を改めて論じる必要があるが、結論的にいえば、誰が管理しているかわからない掲示板には、落書きのような書きこみがされやすいが、さまざまな個人所有のブログをつなぐトラックバックは、一定の理性的抑制がはたらく。誰でも自分の庭はきれいに保ちたいのだ。掲示板が悪意を増殖する装置としての側面を持つのに対し、ブログは「善意の増殖」を促すというのが、筆者の基本的認識だ。
いずれにせよ、94年ごろから一般化の始まったインターネットは広報に多大な影響を与えた、そして98年ごろからの検索技術の進化と、同じ時期の動画や音声などリッチ表現もインターネット活用の範囲を広げた。今年に始まるブログの成長はそれらに続くインパクトを広報に及ぼす可能性を秘めていると考えている。
この領域はスタートしたばかりのため、データも不十分であり、その全貌も把握しきれない。今後一層の検討が求められる。