事例 大手マスコミ不信と参加型ジャーナリズムの模索

日本において、ブログが大手マスコミを批判する事例が出始めている。
共同通信編集委員室は署名つきで実験的なブログを開設している。6月26日に掲載されたライブドアの堀江社長を批判するコメントが反発を招き、一般からの批判の嵐の前で約2ヶ月間更新がストップした事件はその初期の事例である。
記事は説得力ある論拠を示さぬまま、「ちょっと言いすぎたかもしれないが、こういうのが鼻持ちならないというやつだ。読んでいる人たちにはぜひ言いたい。こんなのにだまくらかされていてはいけない!」と、堀江社長批判の感情的なコメントをのせた。
それまでは、あまり注目されないブログであったが、堀江氏が翌々日の深夜、自らのブログでこのことにわずかに触れたことを契機に、YAHOO!掲示板で話題が沸騰し、共同通信のブログは集中豪雨的なコメントとトラックバックの嵐に見舞われる。
たまたま、30日の昼ライブドアプロ野球参入を表明したしたこともあり、時ならず共同通信のブログは注目を集め、29、30の両日だけで2万を超えるアクセスを集めたとされる 。
このため、共同通信ブログは29日の記事を最後に更新をストップ。8月31日に再開するまで、約2ヶ月沈黙せざるを得なかった。
再開の時点までには、合計853のコメント及びトラックバックが寄せられ、そのほとんどが共同通信への批判だった。特にコメントには罵詈讒謗に近い内容が多く含まれている。

プロ野球選手会のストを受けての読売新聞の社説(9月18日、19日、20日)も、ブログで批判された例だ。あるブログは「読売新聞が死んだ日」と断じ、別では「本当にプロが書いた社説なの?」と疑問を呈するありさま。
中馬清福 は「新聞は生き残れるか」において“新聞批判に質的な変化が起こり、重苦しいものになった、と気づいたのは九〇年代の後半、それも終わりのころだった。<中略>同じ仲間だと思っていた読者が「報道の暴力は許さない」といって、はっきりと背を向けだした。広がる一方の報道被害に原因があったことは明らかである”と述懐している。
これまで、漠然と存在していた大手マスコミに対する不信感が、ブログの普及に伴い顕在化してきた。編集の視点で恣意的に選択される、新聞の読者の声欄に比べ、ブログのトラックバックは、そのすべてが原則公開されるのだ。
この流れの上に、ブログをベースにした新しい参加型ジャーナリズムが模索され始めた。
アメリカ大統領選挙において、 ブッシュ大統領の軍歴疑惑に関するCBSニュースの誤報騒動の発火点となったのはブログであると言われている。アメリカでは個人がブログを通じてジャーナリズムに進出し始めたのだ。
ライブドアは8月26日報道部門を設置し独自のニュースコンテンツを提供すると発表、スタッフの採用を開始した。
評論家の木村剛のブログ「週刊!木村剛」は現在最もパワフルなブログのひとつであり、ネット上での評価も高い。すでに「月刊!木村剛」と題する月刊誌の発行に踏み切っているが、9月30日に“「ブロガー新聞」はじめます!”と、ブログベースの参加型ジャーナリズムへの参入を宣言した。
既存の大手マスコミとブログの間には、これから緊張関係と相互協力関係が生まれ、ジャーナリズムのあり方を変えていく可能性がある。