中国でのPR実務

中国でのメディアリレーションズはどのように考えればいいのでしょう。
中国には記者クラブが無い為、常に新しいやり方をしなければなりません。たとえ記事になってもならなくても「プレスの招待会」を極めて頻繁に開き、日本円で3,000〜5,000円くらいの紅包(お車代)を記者に払って来てもらいます。
日本の場合では新聞は、早く記事にしなくてはなりませんが、中国ではあまり即時性を重視しません。また一人で取材に行くとよりもグループ取材を好む傾向にあります。
中国のPR会社は、新聞や雑誌に露出を保証することが通常です。したがって、記事掲載がなかった場合には広告でそれを補います。これにより広告と広報を一体化したシームレスな展開を求められるのが中国の特徴です。
中国の辺境に赴くと、コカコーラのことを学校を意味する言葉と受け止めている人が多数いるという笑い話のような話があります。
中国の辺境・貧困地域における未就学児童の教育を援助する「希望工程」と名付けられたプロジェクトがあります。日本からも多くの企業やNPOがこのプロジェクトを援助していますが、コカコーラは1993年以来老兄で3000万元の寄付を行い、既に52の小学校と100以上の図書館を寄贈し、6万人のこどもたちの就学を援助した結果、希望工程といえばコカコーラという認知を築き上げているのです。
このようなCSR活動の展開は今後ますます重要になるでしょう。オムロンも大学との共同開発プロジェクトや大連マラソンの協賛、中国各界とのトップの交流、中国語手話のスタンダードの整備、市民活動の援助など、派手ではなくとも重要な活動を着実に進めています。
現地に企業市民として迎え入れられるためにはこのような地道な努力が重要であります。
一方、マーケティング活動を考えた場合は、広告だけにとどまらず、広報・SP・WEB・店舗・CSR活動などを組み合わせたトータルキャンペーンが重要です。
中国ではいま消費者の権利を重視するようになりました。3月15日の「消費者の日」にはテレビの生放送で視聴者から企業批判を受け付ける番組があります。仮にそこで名前が出てしまうと当然問い合わせがきます。みんなの前で名前が出てしまったわけですから緊急の対応を図らなくてはいけません。このような危機管理には万全の備えをする必要があるでしょう。特にインターネット論調はつねに目配りが必要です。
党や地方政府との連携を密にし、それぞれの地域できめ細かな対応をすることも重要です。
このように、中国でなすべきPR活動は多岐にわたることを考えれば、日本企業も、日本のPR業界も、一刻も早く体制整備を進めるべきです。


(「評判づくり研究会」での、2005年9月14日の講演記録を加筆編集しました。)