現地化・国際化を求められる日本企業

日本企業は経団連系の海外事業活動関連協議会(CBCC)の呼びかけにより、早くから中国でのCSR実践に取り組んできた。
例えば、オムロンが中国での手話のルールが地方によりまちまちであることに注目し、全国統一のスタンダードを作るために尽力しているというのは、心温まる素晴らしい活動だと思う。
しかし、おしなべていえば、日本企業のCSR活動は、植林・緑化事業、「希望工程」と呼ばれる小学校設立援助や、大学への助成金奨学金などに集中しがちで、一般からの認知が乏しい傾向がある。
サムスン電子は、スポーツ振興に焦点を絞り、毎年4億ドルの予算を投じているというが、このようなダイナミズムは日本企業には希である。
ましてや、政府の政策に迅速に対応する柔軟さはあまり見られない。
北京大学と経済観察報とが実施している「中国で最も尊敬される企業」ランキングはよく引用されるデータだが、ここでの日本企業の評価は芳しくないことは良く知られた事実だ。今後中国でCSRのありかたが企業評価の尺度としてますます重視されることは疑いない。
また、CSRがトラブルやバッシング回避の有効な手段であることを考えれば、CSRを通じ現地との友好関係を構築しておくことはリスクマネジメントの上からも重要なことに違いない。
おそらく、中国現地には決定権限も与えず広報予算も付与しないという、日本企業の一般的マネジメントスタイルのままでは、きめ細かなCSRの実践は困難だろう。
日本企業は一層の現地化を推し進め、グローバルな広報マネジメントに転換する必要があることを痛感した。

なお、末尾にひと言申し添えれば、そのグローバルな広報マネジメントのあり方を探るため、学会では『基本文献プロジェクト』を発足させ、海外の広報・PR文献のリスト化とその評価、翻訳刊行を開始する。当面欧米の文献から手がけることになるが、日本企業の広報グローバル化の一助となればと思う。