CSR元年を迎えた中国

大会の最後には、『ベストPR事例コンクール』の選考結果発表が行われる。
18の部門それぞれの金賞と銀賞、そして全部門を通じての特別大賞が表彰される。
特別大賞は、傑出したPR活動部門が「北京オリンピック公式マスコット周知活動」。社会貢献部門に「エイズ撲滅のためのレッドリボン活動の全国キャンペーン」。優秀アイディア部門は「頂秀青渓ニュータウン開発のPR活動」だった。
いずれも社会的視点を踏まえ、CSRの色彩を帯びていることが興味深い。
ところで、中国PRビジネスの直近の注目キーワードCSRである。中国は現在、政府を先頭にCSRの強化に乗り出している。
中国は華やかな経済発展の裏で、環境破壊、貧富の格差、エネルギー問題、三農(農業・農民・農村)問題など、さまざまな問題を抱えている。しかし、WTO加盟、オリンピックなど国際化の潮流の中で、中国としてもひずみの是正を迫られている。
このような国家的問題の解決に政府とともに企業が参画し始めているのだ。
中国を代表する通信会社のチャイナテレコムは、コミュニケーション弱者のサポートを積極的に推進することに加え、三峡ダム周辺の景観保全に資金を投じている。さらに、中国の最大の問題のひとつとされる三農問題の解決のため、学者を組織化し政府へ政策を提言する準備を今年から始めたという。
北海道大学の渡辺浩平助教授によると、中国の3大乳業メーカーのうち伊利乳業と蒙牛乳業が6月に入り相次いで貧困地域の子供たちへの牛乳の提供を発表したが、これは温家宝首相の「子供たちに毎日500グラムの牛乳を飲ませたい。」という4月の重慶発言に対応したものだと言う。
もちろんCSRへの注目の背景には、ブランド戦略も存在している。中国発のグローバルブランドを構築するためには『軟(ソフト)競争力』の向上が不可欠なのだ。また、多国籍企業サプライチェーンに加わるためには、環境や人権などへの配慮が求められる。
これらを背景に、05年後半に中国でもCSRがキーワードとして浮上した。この2月には中国ではじめての国際CSRシンポジウムが北京で開かれている。
現在、商務部との連携のもと、中国企業連合会が企業に対しCSRの取り組みを呼びかけ、国務院発展研究センターが情報の収集と提供を行い、国家標準化機構を中心にISOの規格化の動きに対応しているという。