井戸端イジング

【湯川】  はい、今回も江戸川大学の濱田逸郎教授にお話をお伺いします。よろしくお願いします。
【濱田】  はい、こんにちは。
【湯川】  いろいろとおもしろいお話、おもしろいキーワードを発信されているんですけれども、その一つに、「イドバタイジング」というのがあるんですけど、これはどういうふうなコンセプトなんでしょうか。
【濱田】  うーん、これもやはり大分前から、僕が言っているんですが、あんまり情報発信しないものだから、ほとんど……。
【湯川】  情報発信をしないといけないとおっしゃっている濱田先生が……
【濱田】  そうなの。(笑)
【湯川】  情報発信されていなかったということですね。
【濱田】  ごめんなさい。今のバイラルマーケティングとか、バズマーケティングというのと言っている内容は同じなわけですね。つまり、ネットの上にコミュニティというのができてきて、その中でいろいろな会話がなされているよと。そこに企業としてメッセージを打ち出していくときには、つまりアドバタイジングという、一方通行の広告メッセージを発信するんじゃなくて、そこの井戸端会議にメンバーとして参加する必要があるよと、これがイドバタイジングなんだということなんですね。
【湯川】  最近、何かそういうことに興味を持たれ、ま、何ていうんだろうな、別の言葉で言うと、「ソーシャル・メディア・オプティマイゼーション」という言葉が出てきましたですね。
【濱田】  はいはい。
【湯川】  まさに、イドバタイジングの考え方そのものですよね。
【濱田】  はい、そうだろうと思いますね。
【湯川】  そういう考え方が出てきたんですけれども、まだ確立した、何ていうんですかね、ノウハウとかそういうものはなくて、皆さん試行錯誤している感じかなと思いますけれども。濱田先生はもう長らくインターネットにかかわってこられてですね、その前の、ニフティの時代からずっとやってこられた方なので、その辺ノウハウというのはどういう形のものなんだろうと思われていますでしょうか。
【濱田】  はい、今、バイラルマーケティングとか、バズマーケティングという言葉があるわけですね。実はマーケティングという部分、マーケティングというのはそもそも、つまりモノを売る仕組みづくりのほうですから、実はマーケティングという響きに、ある種の企業サイドの押しつけがましさみたいなことを実は僕は感じているんですよ。むしろコミュニティが井戸端会議であるとするならば、井戸端会議の中のメンバーとして入って、平場でもって、みんなと話し合いをするとか、あるいはそこで聞いた話をちゃんと経営にフィードバックするというような形の姿勢をとらないと、実は今のソーシャル・メディア・オプティマイズですか、これは決してうまくいかんだろうと思うんですね。というのは、やっぱりともに生きる共生の思想というかな、それがないといかんだろうし、ましてや、企業のスタッフのくせに、立場を隠してですね、井戸端会議でもって、何かそこにいる人たちを誘導しようとすれば、ばれれば、これ袋叩きになるのは当たり前の話ですね。
【湯川】  まあ、それはそうですね。
【濱田】  だから、例えば、企業の、企業の独特のつまり文章表現みたいのありますね。
【湯川】  はい。
【濱田】  稟議書なんか回して、何々の件みたいなね。おそらく井戸端会議なんかでもって、そういう稟議書的な物言いのですね、ネクタイ締めたやつが井戸端会議に入ろうとしても、なかなかこれ、仲間として受け入れてくれないんだろうと思うんですね。ですから、コミュニティというのは井戸端会議なんだから、その中のメンバーとして入っていくっていう原点さえ守っていれば「炎上」しないぞと。「炎上」しちゃうというのは、そこのところが、ややこちらのほうから利用しようというような姿勢が見えちゃうと、「炎上」というのも頻発してくるんだろうなというような感じを持っているんですね。
【湯川】  じゃ、井戸端会議に入る前に身分を明かせばいいんですか。それだけではだめですよね。
【濱田】  それだけじゃだめですね。
【湯川】  身分を明かすというのはもう絶対条件ですよね。
【濱田】  もちろん。
【湯川】  ですよね。
【濱田】  やっぱり聞くこと、聞く耳をちゃんと持つこと。それから、個人個人と真っ正面から相対するといいましょうかね、あるいは僕ら我々これはオーナーシップっていっているんですけども、やっぱりそのメンバーの井戸端会議があるとするならば、そのメンバーの人たちを尊重しないとだめですよね。ブロガーの人たちなんかにしてもそうですけれども、実はそれは我々がこうしたいんだ、こういうような情報を発信したいんだということを率直に言って、ブロガーに対する尊敬の念というのを絶やさなければですね、それはやっぱりそれはいろいろな新しいネットワークができてきて、これは企業なんかにも大いにその示唆に富む、関係性というものはできてくるだろうと思うんですね。
【湯川】  でも、個人として井戸端会議の中に入っていたとしても、そのメンバーはみんな私の後ろには企業がついていることを知っていて、それで企業が何か不祥事なり、何か問題を発生した場合、私自身は全然関係ないんだけれども、その後ろに、企業がついているということで私に対するバッシングが来たりしないですかね。
【濱田】  ええ、特に湯川さんのようなマスコミとかね、私も大学に来る前はマスコミの近接業界にいましたので、そういうのに対するバッシッグというのは現実にありますよね。
【湯川】  それはもう井戸端会議じゃないのかな。井戸端会議ってもっと小さいイメージがあるじゃないですか。でもブログでも人気ブロクになると井戸端会議的な、コミュケーションの場というよりも、メディアになってしまうわけですね、ブロクがね。そうなってしまうと、読者と一対一の心のつながりがあるわけもないので、そういう「炎上」をしてしまうこともあるのかもしれないですけどね。
【濱田】  それはあり得ますね。ただね、やっぱり規模が大きくなっても、その基本姿勢が同じだっていう気が僕はしますけどね。いや、もちろん、それで不幸にして「炎上」するという事実は全くないわけじゃないですから。それはよくわかりますけどもね。
【湯川】  「炎上」した場合、どうすればいいんですか、そういう企業は。企業をバックに持っている個人はどうすればいいんですか。
【濱田】  やっぱり基本的には、オネストリーとクイックリーというか、ともかく迅速に対応するっていうのは重要ですし、時間をかければかけるほど、物事ややこっしくなってきますし、特に一晩おくと最悪ですね。やっぱり「炎上は夜つくられる」というかな。
【湯川】  なるほどね。(笑)
【濱田】  やっぱりクイックリー、それからやっぱり正直にオネストリーに対応するっていうことが必要なんじゃないでしょうかね。
【湯川】  でも、全く聞く耳を持たない人もいらっしゃるわけじゃないですか。
【濱田】  います。
【湯川】  ほとんど人はオネストリーとクイックリーで納得されるんだろうけれども、0.0何%かの人は、そんなこと関係なしに、責めてくる人いらっしゃいますね。
【濱田】  はいはい。そのときにですね、いや、現実にいるんです。現実にいるんですけれども、基本的には、やっぱりつまりロムメンバーというかな、リードオンリーの人たち、この人たちつまり、善意の第三者的って、第三者っていうよりも、というかな、そういう人たちがどう見ているということを常に念頭に置くっていうことだと思うんですね。ですから、0.1%の人がですね、やっぱりそういうの、います。特に、業界的にはこういうのを筋論クレーマーというんでけれども、筋道だった話でクレームをつけてくる人がいるんですね。なかなかこれはクレバーだし、扱うのは大変です。しかしながら筋論クレーマーと相対するときにも、常に第三者から見て、ほかのロムメンバーから見て、どういうぐあいに見えているのかということを常に意識しながら、対処すべきだということは言えるんだろうと思います。
【湯川】  あまりにもひどい何だろう、揚げ足を取りとかそんなのはもう対処する必要はないということですね。
【濱田】  はい。ないということだと思います。
【湯川】  そこはもうお話しましたのでということで、次に進んでいいということですね。
【濱田】  はい、ということだと思いますね。
【湯川】  はい、わかりました。どうもありがとうございました。