顧客イニシアティブの時代

ご承知のように、広報の中には、企業や組織が情報発信を行う「狭義の広報活動」と、社会からの情報を受信する「広聴活動」が含まれていますが、近年、後者の広聴活動の重要性が再認識されています。
戦後日本の経済発展の牽引役を果たしていたのは、長い間、企業の旺盛な事業展開でした。やがてダイエー西友を筆頭とした流通業のバイイングパワーが大きな力を持つにいたり、今、バブルの崩壊とモノ余り状況の中、顧客の力がついてきています。いわゆる消費者主権の時代です。
このことを私は「企業イニシアティブから顧客イニシアティブへ」と表現しています。
この場合の「顧客」概念には、消費者だけでなく、株主、地域社会、従業員、取引先、社会一般など、幅広いステークホルダーが含まれます。顧客イニシアティブの時代にあって、企業はそれまで行ってきた独善的な経営では立ち行かなくなりました。相次ぐ企業不祥事も「社会の常識」に目をつぶり、「会社の常識」に固執することから生まれるケースが数多く見受けられます。株主の意見を傾聴せずして経営はなりたちません。
「顧客」に学ぶ姿勢なくして経営ができない時代なのです。
となると、顧客や株主や社会等の外部論理を社内に組み込むことが今日の大きな課題であり、その役割の中心となるのが広報です。
ステークホルダーとのコミュニケーションから指針を得ようとする経営を、「コミュニケーション・オリエンテッド・マネジメント」と呼ぶことができます。
NGOとの共同作業で家電製品を開発した担当の方から、最初はNGOの方と全く意見がかみ合わず何度も行き詰まり、プロジェクトが空中分解するのではないかと案じていたが、やがて相互理解が進み画期的な製品の開発に成功したという話しをうかがったことがあります。これなどはその好個の事例でしょう。